フネを愉しみ、メンテナンスを愉しみ、コンクールを愉しむ
慈しみ、愛おしみ、すべてを受容するヴィンテージの理想郷


 Michael Rybovich & Sons の工場が建つ運河のさらに奥。現存する最古のライボヴィッチ、1954年製 Hull #2「LEGEND」が係留されるプライベート桟橋で、もう一艇のライボヴィッチを待つ。そこへ海から現れたライボヴィッチが、1964年製 Hull #58「SAM Ⅴ」だ。1954年製と1964年製の2つのライボヴィッチ。夢のような取材が実現した。
 Hull #58「SAM Ⅴ」は、Hull #2「LEGEND」からすれば新しいライボヴィッチ。だが、それでも1964年製と立派に古い。スポーツフィッシャー界の巨人VIKING Yachts の創業が同じ年1964年と聞けば、その歴史の重みがわかるだろう。



 ライボヴィッチ36「SAM Ⅴ」に乗り込む。フライブリッジにアルミ製スプレッダー付きアウトリガー、ロッドポスト、そしてファイティングチェア。今では少ないオープンキャビンというところ以外、デザインも装備も現代のスポーツフィッシャーと変わらない。この時代にあって、現代に通じるスポーツフィッシャーに必要とされる全てが、満たされている。

 現代のスポーツフィッシャーと比較しても全く違和感を感じないスタイリング。最新のカスタム系ビルダーも取り入れているタンブルフォーム。無垢のチークを使ったブルワークに、バーニッシュされたチークトリムがアクセントとなる。美しい光沢に光るトランサムボードに、ブルワークのカーブに合わせられたゴールドの船名が光る。そして、フライブリッジのダブルハンドレールはライボヴィッチだけに許された伝統のデザインだ。

 気さくなオーナーBobは操船をしながら、「SAM V」の特徴やシステムを案内してくれる。ライボヴィッチへの愛着、「SAM V」を愛する気持ちが伝わってくる。



 運河の途中から、操船を交代する。シフトの金物はオールドだが、ライボヴィッチが考案したパームビーチスタイルは完成されている。チェーンを使った機械式のステアリングは、若干重くスムーズとは言いがたいが、最もシンプルで信頼性が高く、メンテナンス性が良い。

 運河を出て、広い湾で「SAM V」を走らせる。立ち上がりもスムーズでハンドリングもニュートラル。さらにウッドゥンボート特有の柔らかい波当たりと浮きの良さを感じることができる。



 トップスピードは27ノット、クルージングスピードは21ノット。トップスピードはヴィンテージのライボヴィッチにとってはどうでもいいデータではあるが、1964年製のフライブリッジ艇がこのスピードで走る事ができる事実。最新のコンピュータで計算されたボートと変わらない走り……。
 60年代にこれほどのボートが造られ、ルアーを使ったカジキ釣りが楽しまれ、ビルフィッシュトーナメントが開催されていた歴史。それこそが、スポーツフィッシャーを完成させ、全てのスポーツフィッシャーの見本となった生ける伝説、RYBOVICHの歴史でもある。 P.B.




YBOVICH 36 “SAM V”
Hull # 58
Length 36 ft
Built 1964
■RYBOVICHに関する問い合わせ先:ハウンツ
 TEL: 045-778-1532 
http://www.haunts-bs.net

text: Yoshinari Furuya
photo: Makoto Yamada, Kai Yukawa
special thanks: Mr. Bob Melton [owner]
[Perfect BOAT 2014年2月号掲載/]/※データは掲載時のものです]