コーストエリアも桜の季節を迎え、マリーナを淡いピンクに染めている。青空とまだ肌寒さを伴う北西風の吹く横浜ベイサイドマリーナ、ビジターバース。新たに居住まいを正し、正常進化したフライブリッジクラスのミッドレンジ、スーパーホワイトの「PRINCESS 60」が颯爽とした佇まいで迎え入れてくれる。「PRINCESS YACHTS」の生まれた海は、冬には白い断崖に波頭が崩れるタフな海象のイングランド南西部プリマスにあるイギリス海峡。その海が迎える緩やかな春の環境に、緩みはじめた横浜の海が、今シンクロする。

ワイドビームの落ち着き、印象的なダブルウィンドウ、ミジップのフルビームステイトルーム
オーナー自ら選んだCAT C18-1,015馬力のパワーソースに、
VECTOR Finsゼロスピードスタビライザー
スタイリングもテクノロジーも進化し続ける「PRINCESS」の最新ミッドレンジ


 2008年に始まった「PRINCESS(プリンセス)」のイノベーション、インテリア、エクステリア全般に渡るリボーン理念。オーナーズルームをミジップに、ビームいっぱいにもってくることで全てのバランスを見直した。そのオーナーズルームにはシービューウィンドウがハルに開けられ、採光と開放感に満たされる。

 2011年に「PRINCESS 60」はサウサンプトン・ボートショーでリボーンして登場している。その3年後の2014年秋、同じくサウサンプトン・ボートショーでさらにモデルチェンジを受けてお披露目されたのが現在の「PRINCESS 60」。全長18.61m、全幅4.83m、さらにワイドになったサロンのダブルウィンドウ、ハルセンターに位置するワンピースのスクエアなシービューウィンドウと半楕円の舷窓、バウ両舷の横長の半楕円舷窓のエレガントさ。まるで白鳥が羽をたたんで優雅に佇んでいるかのような低いレーダアーチ。コックピット後端まで伸びたフライブリッジのルーフエンド。PRINCESSの上質な伝統を継承しながら、モダナイズが施されている。バーナード・オレシンスキーとプリンセス・デザインの作となるハルとフォルムは、安定感とスポーティさを兼ね合わせた伸びやかで絶妙なバランスを見せる。コックピットからサイドデッキ、バウデッキまでウォークアラウンドエリアは精緻なチークソール。さらに油圧昇降式のスイミングプラットフォームからコックピットへのラダー、フライブリッジへのアプローチにも美しいチークが張り巡らされている。
 快適なマリタイムに必要な装備としてハイグレードな艇では横揺れ防止装置、オートジャイロの装備がブームとなっているが、なんとこの「60」にはオーナーの選択で最新のシステムが搭載されている。コンピュータ制御で停止時の静止状態をも確保するゼロスピードスタビライザー機能を持つ、革新的なSIDE POWER製の「VECTOR Fins」フィンスタビライザーを備えているのだ。



 ポンツーンに立ち、見上げてみる。ワイドビームの落ち着き、両舷コックピットラダーのチーク、コックピットのホワイトU字シートとトップの印象的なマリンブルーのストライプが際立つ。ホワイト&ブルー、オーナーの海への憧憬がこの色を選んだ。
 サロンに入ると右舷側にコの字型のプラチナムレザーの真っ白な本革ソファが置かれ、左舷側には同じ仕様の2人掛けソファが対面している。このソファに座ると深く低い位置にいる安心感とラップアラウンドした視界が広がる。快適なラウンジそのものだ。

 カーペットもホワイト、PRINCESS Mラインと同じ毛足の長い上質なものが敷かれている。キャビネットやストレージのファニチャーやトリムのウッドもオーナーの好みで最上級のウォールナット材。上質と落ち着きの要でもあるブリティシュトラッドの趣が漂う。2ステップ上がった前方右舷はギャレー、左舷はダイネッティのリラックスエリアとなる。ギャレーには大容量の冷凍冷蔵庫、2バーナーのIHコンロ、電子レンジはもちろん、デッシュウォッシャー、製氷機が用意され、充実のキッチンがそこにある。大切なゲストのために自慢の手料理を振舞うにも見晴らしの良い位置。左舷のダイネッティもクルーズ中はベストビューシートとなる。マリタイムの楽しみ、マリーナライフや島巡りクルージングでのモーニングやランチ、そしてディナーはこの席で。フローティングヴィラの落ち着きと楽しみが凝縮する場でもある。そしてフローティングのマリタイムをサポートしてくれるのが、揺れ防止のゼロスピードスタビライザーを実践するVECTOR Finsなのだ。

 前方右舷にはメインヘルムがある。搭載エンジン、キャタピラーC18、1,015HP×2基関連のアナログメーターが、ステアリングを握ると、まさにスポーツカーのコンソールレイアウトのごとく並んでいる。これもプリンセスの伝統だ。もちろんデジタルのエンジンモニターがしっかりとバックアップしている。最新のタッチパネル式ハイブリッド レイマリンレーダー&GPSプロッターがコンソールに並ぶ。ステアリング右サイドにはバイワイヤーのスロットルレバー、イージードッキング XENTAシステムのジョイスティック・グリップが並ぶ。コンソール左にはチャートスペース。これが正しい。荒天時やロングクルーズのヘルムが頼もしいものになるだろう。



 操船のためにフライブリッジに上がる。ブラウンとスーパーホワイトにマリンブルーの彩色が目に艶やかに飛び込んでくる。シートの白とブルー、チークにテーブルのブラウンだ。オールチークソールのフライブリッジには、左舷前方に2脚のパイロットシートを持つ機能的なヘルムステーションがある。右舷にはコの字のラウンジシートがあり、前部は傾斜しサンタンベッドにもなる。ヘルムの後ろにはバーベキューグリルにウェットバーが用意される。その後部は半円形のラウンジシートが取り囲む。パノラマビューのエンターテイメントエリアとしてこの解放感は心地よい。
 横浜ベイサイドマリーナ沖からシートライアル。晴れ、気温15℃、北西風6m/s、波高0.5m。横浜港までのショートラン。

 スロットルをワンノッチ入れてみる。ほんの少しだが確実な駆動の伝達を感じ取る。全長19mにならんとするこの「60」、走り出しからスムーズに速度に乗るC18のトルク溢れる感覚は驚くほどシームレス。オーナーはノーマルのボルボペンタD13を選ばず、オプションのキャタピラーC18を選択している。本船もいない広大な海域を選び船速と燃料消費率のトライアルを試みる。清水、燃料共に60%、4名搭乗。650rpm – 7.1ノット – 両舷燃費16L/h – レンジ1,080nm、800rpm – 9.3ノット – 26L/h、1,000rpm – 10.0ノット – 50L/h、1,500rpm – 16.7ノット – 158L/h – 232nm、1,800rpm – 22.8ノット – 248L/h。1,500rpmを越えるとハンプを感じさせないままプレーニングし、抜群の直進性能を伴って痛快な加速に移行する。スピード感を感じずに浮遊感を伴う心地よさは特筆ものだ。2,000rpm – 26.8ノット – 300L/h、クルージング速度だ。2,100rpm – 27.8ノット – 329L/h – 209nm、2,200rpm – 30.2ノット – 368L/h。

 転舵する。ノーズがステアリングを切り込んだと同時に回りこむ。VECTOR Finsのゼロスピードスタビライザーが効いているせいか、インサイドバンクはあまり無いまま、軽快なパフォーマンスが得られる。MAX2,320rpm – 32.3ノット – 376L/h – 208nm。本船のはぐれ波や自分のウェーキに突っ込んでみるがさらりと軽くいなしていく。VECTOR Finsの効果はてき面。BENNETTのフラップはフラットのままに、船体を水平に保とうとするフラップ操作を不要にしてくれるのだ。燃料を満タン状態にしてから再度トライアルをすると、MAX27.9ノットであった。



 帰港しロアデッキを見る。3ステートが用意されている。ミジップにビームいっぱいのオーナーズステート。両舷のシービューウィンドウからの採光は光の演出に効果を見せ、ゆとりのアイランドベッドはリラクゼーションの術が潜むかのようだ。クローゼットなどのファニチャーはピアノバーニッシュチェリー。落ち着きとエレガンスが同居する寛ぎの空間が設えられている。シャワースペースもパウダーエリアもPERRIN ROWEに代表される調度が使われ、癒しの心遣いが随所に見られる。前方バウにはオーナーズステイト同様の質感を持つVIPルームとパウダー&シャワーエリアが用意され、その手前右舷にはツインベッドのゲストステイトがある。クルーが快適であること、それはオーナーとゲストへのおもてなしの第一歩でもある。クルールームはアフトコックピットのラウンジシート下に、2ベッド+ヘッド&シャワー+シンクとウェットバーを持つ快適なエリアが用意されている。



 「PRINCESS 60」の走行フィールはマジックカーペットと称されるフラットな乗心地。言わば、ベントレー・ミュルザンヌ・スピードの、走りのスタビリティを持ちつつ感じる重厚感に近似する。荒天の多い英国近海で生まれたPRINCESS、タフな環境に強く快適である事はまさにブリティッシュスポーツカー。快適なロングクルージングに誘うグランドツーリング「GT」のバッジをどこかに付けたいとすら思う。
 ブリティッシュネスの伝承、気高さそして進化。通年の慣例としてロンドン、セビルローのギーヴズ&ホークスで背広を設え、ノーザンプトンのジョン・ロブで紳士靴をあしらう。オンシーズンには解放され、自由奔放にPRINCESSに乗る。そんなダンディズムの気概に今回も触れたかのような感動が、いつまでも余韻として残っている。PRINCESSオーナーの粋筋というものだ。 P.B.



PRINCESS 60
全長 18.61 m
全幅 4.83 m
喫水 1.27 m
重量 25.0 ton
燃料タンク 2,800 L
清水タンク 793 L
エンジン 2× CATERPILLAR C18
最高出力 2× 1,015 HP
■問い合わせ先
 プリンセスヨットジャパン
  TEL: 045-441-7700
  http://www.princessyachts-japan.com 
ポートサイド
  TEL: 045-770-6141
  http://www.portside-marine.com

text: Kenji Yamazaki
photo: Makoto Yamada
special thanks: PRINCESS YACHTS JAPAN
http://www.princessyachts-japan.com
PORT SIDE MARINE
http://www.portside-marine.com
[Perfect BOAT 2016年6月号掲載/]/※データは掲載時のものです]