SUNSEEKER 155 Blush03SUNSEEKER 155 Blush

 英国海軍からチャーターヨットまで様々な船を渡り歩き、これまで30万海里以上にもなる航海経験をもつキャプテン・ナイジェル。現在はマイアミに居を構え、世界のトップセレブリティを相手にチャーターやコンサルティングを手がける彼が、独自のネットワークでつながるメガヨットの世界を紹介する。壮大かつ華麗な、メガヨットワールドをご堪能あれ。

SUNSEEKER 155 Blush01 今年の初め故郷のイギリスへ帰った際、サンシーカーが155フィートを進水したという話しを耳にした。「ブラッシュ」という名のこのヨットは、F1スター、エディ・ジョーダンのために造られたという。
 実家はサンシーカー・インターナショナルの工場があるプールからほんの少しドライブしたところにある。その日は春の陽射しが眩く、これはドライブがてらサンシーカーの工場へ行くには最高の日だと思い立ち、アポを取って工場へと向かった。
 サンシーカーのこの工場で造られるヨットは、世界最高のヨットでなくてはならない。毎回そのヨット製造ラインを見るたびに感銘させられる。2014年は、23隻を建造予定。これは地球上でも最高の数だ。 しかも私が工場に立ち寄った日にはなんと、2隻目の155フィートがドバイのクライアントと契約されたばかりだった。
 とにかく、今回の目的はただ一つ。目を見張るほど素晴らしく、数週間前にF1スターとサンシーカー・インターナショナル・グループ社長の目前で進水したばかりのこの155フィートのヨットを、この目で見ることだ。
 会った瞬間、私にはわかった。このヨットは本当に鳴り物入りの素晴らしさだ!
 コーデカーサやISAといったイタリアのメガヨットや、オランダやドイツのメガヨットビルダーのようなものだろうと最初は予測していた。だが、それは完全に裏切られた。これは、イタリアのスタイルでもなければ、北欧、オランダ、ドイツのヨットとも違う。これは疑いなくブリティッシュ、……確実にイングリッシュだ。
 イギリスで生み出されたデザインコンセプト、そして建造と試運転はイギリス南岸のプール。この155フィートもは紛れもなく、ここ英国で進水されたのだ。
「ブラッシュ」号は、オーナー エディ・ジョーダンの意向を最大限に生かして造られたヨットだ。ジョーダン氏は、サンシーカーから何を期待できるのか分かっていたそうだ。彼は、軽くて速く、心地良い安全なヨットを求め、スチールやアルミは重すぎると思っている。そして、サンシーカーの大ファンでもあった。

SUNSEEKER 155 Blush05 彼が155フィートヨットのためにサンシーカーを選んだのは正解だ。サンシーカーは豊富な知識を用いて、GRP(glass reinforced plastics ガラス繊維強化プラスチック)を用いた合成ハルの傑作を造りあげた。船体と上部構造は、オーストラリアのモールドCAMが型のパーツを300も造り上げ、それを英国サンシーカーの工場へ発送。サンシーカーはそれらを組み合わせてシームレスなヨットの型を造り上げた。
 これは、サンシーカーが未来のクライアントの趣向に合わせて変えることができるということだ。そしてこの155フィートを、サンシーカーは完璧なカスタムヨットに仕上げた。クライアントはインテリアだけではなく、レイアウト全体、船のエクステリア、果ては上部構造まで変更することができる。他のヨットビルダーはまだこれを行ってはいない。サンシーカーのクライアントだけが、自分の意向を反映した世界で唯一無二の155フィートのヨットを造り上げることができるのだ。
 この「ブラッシュ」号は、サンシーカーでは初となるスーパーヨットスタイルのビーチクラブをフィーチャーしている。メインデッキ前方にはビーム一杯にとったマスタースイート。右舷側にはバルコニー付きだ。メインデッキの2室のVIPルームには床から天井まで大きくとった窓が取り付けられ、上部デッキのアッパーサルーンには大きなフレンチウィンドウがあり、そこを通ると二つの折りたたみ式テラスがある。夜に海面が穏やかになったら、アッパーサルーンのバルコニーを開けるとまるでデッキへ出た気分になるだろう。
 10名のゲストが宿泊でき、下部デッキにはダブルキャビンが2室、マスターキャビンと2室のVIPキャビンはメインデッキの前方にある。これは未だかつて見たことのないキャビンの配置だ。下部デッキのその他のスペースには、クルーのことをしっかりと考慮してくれたクルーエリアに、テクニカルスペースと、すぐにチャーターでフル稼働できるギャレーがある。
 この画期的なデザインは極めて手が込んでおり、ディテールは非常に目を引くものだ。クルーエリアは10名のクルーとキャプテンの生活スペースとなっており、すぐにでもチャーターできる。
「ブラッシュ」号のスマートでアグレッシブなラインは、小型のサンシーカーを彷彿とさせるが、それ以上のものがこのヨットにはある。後部デッキはプライバシーをしっかりと守れるようにデザインされており、これはオーナーにとって非常に重要だ。サンデッキは広大なリラクゼーションスペースとなっており、前方にはスパ・プール、後方にはサンベッドやバー、ダイニングエリアがレーダーアーチの下に広がる。上部デッキのアレンジによって美しい風景を堪能することができ、メインデッキ前方にあるエリアでは海の心地良い風を楽しむこともできる。

SUNSEEKER 155 Blush08 丸みをおびたスタイルの船体はサンシーカーにとっては最初の試みで、これによってより速く効率的な長距離航海が出来るだろう。MTUエンジンを2基搭載し、トップスピードは22ノット以上。オプションで用意されるさらに大型のエンジンならトップスピードは28ノットだ!
 残念ながら、2日前に行った試運転には間に合わなかったが、サンシーカーのテクニカルチーフによると、2〜3mほどのうねりがある海上での試運転をしたそうだ。波の上をスムーズに走る船首のデザインは、全く水面を打つことも、水しぶきを上げることもなかったという。10ノットでの燃費は1時間あたり50リッター。これもまた素晴らしい!
 サンシーカーによる真のスーパーヨット建造への努力は、正確に物事をこなすという熱意の結晶でもある。集結した音振コンサルタント陣や経験豊富な大型ヨット専門家による助言のもと、最高のクオリティが求められ、結果としてこの第1号ハルが造られたのだ。
 英国船員免許を保有するイギリス人として、私はこのサンシーカーの功績を非常に誇りに思う。100%英国の会社による「ブリティッシュ・サクセスストーリー」だ。ブリティッシュ・スタイリング、ブリティッシュ・デザインに、エンジニアリングはファーストクラス、これは長き英国の歴史にこだまする現代美術品だ!
 このヨットはファンタスティックなヨットだ。来年進水予定のハルナンバー2の舵を握る日を、私は今から非常に待ち遠しく思っている。

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photos: Sunseeker
text: Captain Nigel Beatty
PerfectBOAT 2014年10月号掲載/※データは掲載時のものです]

SUNSEEKER 155 “Blush”
全長 47.25 m / 155′ 0″
全幅 9.34 m / 30′ 8″
喫水 2.25 m / 7′ 5″
重量 295 ton
構造 GRP
エンジン 2× MTU 12V 4000 M73L
出力 2× 2,940 PS
スピード Max 22 kt
レンジ 4,000 NM
燃料容量 60,000 L
清水容量 13,765 L
オーナー&ゲスト 10 guests in 5 staterooms
クルー 11
船級  RINA Commercial & MCA LY3
問い合わせ先 Sunseeker Japan, Co., Ltd.
info@sunseeker-japan.com
www.sunseeker-japan.com

Captain Nigel Beatty

 ナイジェル・ビーティー:1969年、英国ベッドフォード生まれ。高校卒業後、欧州放浪の旅に出る。その後、英国海軍に入隊。航海術や操船術などを学び、海軍ヘリコプターコントロール専門の管制官になる。5年後、バハマでスキューバダイビングのボートキャプテンとなるべく英国海軍を退役。1997年にヨット界に飛び込み、ヨットキャプテンとなる。英国MCA3000トンのキャプテンライセンスを所持。これまでにメガヨットのキャプテンとして、米国東海岸、バハマ、タークス・アンド・ケイコス、カリブ海、日本、中南米、地中海、インド洋、ペルシャ湾を航海し、航海経歴は30万海里以上におよぶ。現在、ヨットセールス、チャーター、コンサルティング、マリンパーツ販売を手がけるスーパーヨット・ロジスティックスを日本人妻と運営。プロジェクトマネージャー、テクニカルマネージャー、リフィットマネージャーとして数多くの新艇プロジェクトをも手がける。2008年、新人メガヨットキャプテンのインストラクターに就任。2009年には新キャプテン最終試験官に就任し、後輩キャプテンとなる生徒をビシビシと厳しく指導している。スコアはイマイチだが大のゴルフ好きで、2002年のワールド・キャプテン・ゴルフ・トーナメントでは栄誉ある「Wanker of the Year」を受賞。日本語を鋭意勉強中。日本語力は、まともな焼酎を注文したり、間違えずに電車に乗れるくらいに上達した。

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